EWA(EarlyWatch Alert)とは?
EWA(EarlyWatch Alert)は、SAPが提供するシステム監視および分析ツールで、システムの安定性、パフォーマンス、セキュリティを維持・向上させる役割を担っています。
このツールは、SAP Solution Managerを利用して定期的にシステムの状況を分析し、レポートとして結果を提供します。
レポートの内容は、CPUやメモリの使用状況、データベースのパフォーマンス、セキュリティ設定、システム構成のリスクを特定し、改善のための具体的な推奨事項が出力されています。
EWAを利用することで、システム管理者はシステムの問題を検知し、適切な予防保守を行うことが可能です。
また、検知基準は随時更新されるため、定期的なモニタリングにより、システムの安定性を保つことができます。
EWAがカバーする主な監視領域
EWA(EarlyWatch Alert)は、SAPシステムの健全性を維持するため、さまざまな領域で監視・分析が行われます。
下記はEWAの主な監視項目です。
システムパフォーマンス
EWAは、システムのパフォーマンス指標を詳細に監視し、ボトルネックやリソースの非効率な使用状況を出力されます。
- CPU使用率: 過剰に使用されているプロセスやパフォーマンスを低下させる要因を特定。
- メモリ使用量: メモリリークや不足状況を検出し、最適化の推奨を提示。
- ディスク使用率: ストレージ容量の不足や異常な増加を事前に警告。
システム構成の最適化
EWAは、システム構成が最適な状態で運用されているかを確認し、必要に応じて改善方法が出力されています。
- パラメータ設定: プロファイルパラメータの不適切な設定を指摘。
- システムロード分散: ロードバランシングが適切かを分析し、修正案を提供。
- データベースのパフォーマンス: クエリの最適化やインデックスの利用状況を確認。
セキュリティリスクの検出
EWAは、セキュリティ設定に潜むリスクを特定し、改善方法が出力されています。
- パスワードポリシー: 設定が強化されているかを検証。
- システムアクセス権: 過剰な権限や不正アクセスのリスクを分析。
EWAを利用するための前提条件
EWA(EarlyWatch Alert)を利用するには、いくつかの前提条件と設定が必要です。
必須ソリューション
- SAP Solution Manager
EWAのレポート作成には、SAP Solution Managerが必要です。
Solution Managerは、SAPシステム全体の監視・管理を行うためのツールで、EWAレポート生成の中心的な役割を果たします。 - バージョン要件
最新バージョンのSAP Solution Manager(2025年1月現在は7.2以降)が推奨されます。
必要なシステム要件
- SAPシステムの構成
EWAを有効にするには、SAP NetWeaverベースのシステムである必要があります。 - 監視対象のシステム
EWAレポートを生成する対象システムが、Solution Managerに正しく登録されていることが前提です。
接続設定
- RFC接続
Solution Managerと対象システム間で、正しく設定されたRFC(Remote Function Call)接続が必要です。
この接続を通じてシステムデータを収集します。 - データ収集スケジュール
定期的にデータを収集するよう、データ転送スケジュールを設定します。
EWAの実行手順
EWA(EarlyWatch Alert)は、SAP Solution Managerを通じて設定および実行されます。
レポート生成のプロセス
- データ収集の開始
- Solution Managerが対象システムから必要なデータ(パフォーマンス、構成、セキュリティ情報など)を収集されます。
- データ収集は通常、バックグラウンドジョブとして定期的に実行されます。
- データ解析
- 収集したデータをSolution Manager内の診断ツールが分析されます。
- ボトルネックやリスクが検出され、適切な推奨事項が生成されます。
- レポートの生成
- 分析結果がレポート形式で生成されます。
- レポートはDOCやPDF形式で保存やダウンロードが可能です。
- レポートの配信
- 設定により、EWAレポートは自動的にメール送信されたり、Solution Managerのダッシュボードで確認できます。
SAP Solution ManagerでのEWA設定方法
- システムの登録
- SAP Solution Managerに監視対象システムを登録します。
- システムランドスケープの設定を行い、正しいシステム情報を入力します。
- RFC接続の設定
- Solution Managerと対象システム間の通信を行うため、RFC(Remote Function Call)接続を設定します。
- 通信が正常に行えることをテストで確認します。
- データ収集スケジュールの設定
- EWAレポート生成のため、データ収集のスケジュールを設定します。
- 通常は週単位でデータ収集が行われるように設定します。
- EWAサービスの有効化
- Solution Managerの「EWAサービス」を有効にします。
- デフォルト設定が有効であるか確認し、必要に応じてカスタマイズします。
- レポートの確認
- 収集されたデータが正しくレポートに反映されているか確認します。
- 必要に応じて、対象システムや設定を調整します。
EWA設定方法を簡単に記載しましたが、私の経験上、実際には細かな設定が必要のため1人月程度の工数がかかります。
EWAレポートの活用方法
作成されたEWA(EarlyWatch Alert)レポートは、SAPシステムの健全性を維持し、改善するための重要な情報源です。
下記に、どのように活用できるのか具体例を解説します。
パフォーマンス問題の改善
上述している通り、レポートにはCPU使用率、メモリ消費量、ディスク使用状況、データベース応答時間などが記載されています。
- ボトルネックの特定: 高負荷のプロセスや遅延の原因となるクエリを特定。
セキュリティリスクへの対応
未使用のユーザアカウントやパスワードポリシーの不備、不適切なアクセス権が指摘されます。
- パスワードポリシーの強化: 複雑性要件や有効期限などパスワードポリシーに沿った設定になっているか確認。
- アクセス権の見直し: 過剰な権限を持つユーザを特定し、適切なロールに調整。
SAP推奨に基づいたシステム構成の改善提案
推奨されるプロファイルパラメータ設定やシステム構成値の改善案が提示されます。
- プロファイルパラメータの調整: SAP推奨値になっていないパラメータ値はレポートを出力。
稼働状況の定期確認
EWAレポートの内容を定期的に確認することで、改善策を計画します。
- レポートの重要箇所を抜粋し、稼働改善に必要な課題を分析。