SAP Noteとは?
SAP Noteの概要
SAP Noteは、SAP社が提供するシステム改善や問題解決のための情報文書です。
具体的には、バグ修正、システム最適化、法規制対応などが含まれます。
SAPシステム管理者は、この情報を基にSAPシステムへ適用し、安定性や性能を向上させることができます。
SAP Noteの種類
- 修正ノート
- 修正ノートは、SAPシステムにおけるバグ修正や機能の改善を目的として提供される公式な情報です。このノートは特定の問題に焦点を当てており、システムの安定性や性能向上を実現するための具体的な手順やコード変更が記載されています。
- コンサルティングノート
- コンサルティングノートは、SAP製品の効果的な使用方法や運用のベストプラクティスを提供するノートです。これらは特定の問題解決を目的とするものではなく、システムの最適化やパフォーマンス向上を目指したガイドラインとして利用されます。
SAP Noteの適用手順
SAP Noteは、適用前にNote記載のシステムバージョンと適用する実機のバージョンの互換性を確認します。
一般的にSAP GUIから「Tr-cd:SNOTE」を実行して適用するNote番号を検索し適用します。
また、外部接続できないSAP環境ではWEB上のNoteから修正プログラムをDLしアップロードすることも可能です。
3ランドスケープへの適用は下記のとおりです。
- [開発機(DEV)] Tr-cd:SNOTE にてNoteを適用します。適用時に移送を取得します。
- [検証機(QAS)] Tr-cd:STMS にてNo.1の移送を適用します。
- [本番機(PRD)] Tr-cd:STMS にてNo.1の移送を適用します。
SAP Noteを使用する際の注意点
SAP Noteの中にはNote適用と合わせてマニュアルアクティビティというものを別途実施しなければならないNoteがあります。
マニュアルアクティビティとは、Noteの修正プログラムだけでは補えない修正などをマニュアル実行することです。
Note内にマニュアル実行する手順が記載されているので実行し変更内容はNoteと合わせて移送で各システムへ適用することが一般的です。
SAP Support Package(SP)とは?
SAP Support Package(SP)は、SAPシステムの問題修正や機能改善を目的としたソフトウェア更新の単位です。SAPは定期的にSPをリリースし、バグ修正やセキュリティ向上、パフォーマンス最適化を提供します。SPはシステムの安定性と信頼性を維持するために欠かせないもので、特に運用中のトラブルを未然に防ぐ重要な役割を担っています。
SAP Support Packageの基本
SAP Support Package(SP)は、SAPシステムで発生する問題を解決するための修正プログラムと、機能改善を目的とした更新が含まれたパッケージです。通常、SAP Noteで提供される個別の修正をまとめた形で提供されます。これにより、複数の修正や更新を一度に適用することが可能となり、システム管理の効率が向上します。
SPは個別のシステムコンポーネント(例: Basis, ABAP, HANA)ごとにリリースされ、適用することでシステム全体の安定性やセキュリティを向上させる役割を果たします。
SAP Noteとの関係
SAP NoteとSPは密接に関連しています。SAP Noteは個別の問題に対応する修正情報を提供しますが、SPはそれらのSAP Noteをまとめて適用可能な形にしたパッケージです。
- SAP Noteの位置づけ: 個別の問題を迅速に解決するためのピンポイントの修正情報。
- SPの位置づけ: 複数のSAP Noteを集約し、広範囲に適用できる形にしたもの。
例えば、緊急の問題解決が必要な場合はSAP Noteを適用し、計画的なメンテナンスではSPを適用するのが一般的です。SPはシステム全体のバージョンを統一するのに役立ち、安定性を高めるために重要な手段となります。
SAP Support Package Stack(SPS)とは?
SAP Support Package Stack(SPS)は、SAPが提供するシステム更新の総合パッケージで、Support Package(SP)を組み合わせた形で提供されます。各SPSは、特定のSAPソフトウェアのリリースバージョンに対応しており、全体的なシステムの安定性や互換性を確保する目的でリリースされます。
Support Package Stackの基礎
SPSは、特定のバージョンのSAPシステムに必要なSupport Package(SP)を包括的にまとめたもので、システム全体の更新を一度に適用できる形式です。以下の特徴があります:
- 包括的な更新
各モジュール(Basis、ABAP、HANA、UIなど)の関連するSPを1つのスタックとして提供します。 - 互換性の保証
SAPのリリースバージョンに応じた最適な組み合わせが含まれており、互換性の問題を最小限に抑えます。 - 定期的なリリース
SAPはSPSを定期的にリリースしており、システムのパフォーマンスやセキュリティを向上させるために重要な役割を果たします。
Enhancement Package(EHP)とは?
Enhancement Package(EHP)は、SAPが提供する機能拡張と改善を目的とした追加パッケージです。EHPを適用することで、システムの基本バージョンを維持したまま、新しい機能や業務プロセスを導入できます。これにより、システム全体の更新や再インストールを避けつつ、最新の技術や機能を活用することが可能になります。
Enhancement Packageの役割
EHPの主な役割は以下の通りです:
- 新機能の導入
EHPは、SAPシステムに新しい業務プロセスや機能を追加します。これにより、最新のビジネス要件に対応可能となります。 - 柔軟な適用オプション
必要な機能のみを選択的に適用できるため、不要な機能でシステムが複雑化するリスクを回避できます。 - システムの安定性の維持
基本バージョン(例: SAP ERP 6.0)を維持しつつ、追加機能を導入するため、全体的な安定性を損なうことなく改善が可能です。
EHPとSPSの関係
EHPとSPSは密接に関連していますが、目的と適用範囲に違いがあります:
- SPS(Support Package Stack)
システム全体の修正やセキュリティ更新をまとめたパッケージ。主に問題解決やパフォーマンス向上を目的としています。 - EHP(Enhancement Package)
新機能や業務プロセスを追加するためのパッケージ。システムの機能拡張に特化しています。
EHP適用には、特定のSPSバージョンが前提条件となることが一般的です。適用計画を立てる際は、対応するSPSバージョンを確認する必要があります。
SAP Note、SP、SPS、EHPの違いまとめ
項目 | SAP Note | Support Package(SP) | Support Package Stack(SPS) | Enhancement Package(EHP) |
---|---|---|---|---|
目的 | 特定の問題や質問に対する解決策やガイドラインを提供 | 特定のモジュールや問題に焦点を当てた修正や更新 | システム全体を包括的に更新し、互換性を確保 | 新機能や業務プロセスを追加し、システムの柔軟性を向上 |
構成 | 個別の修正内容や運用ガイドライン | 個別の修正や機能改善 | SPをまとめたパッケージで、複数のモジュールを更新 | 必要なSPSを前提に、新しい機能を提供するモジュールの追加 |
適用範囲 | システム内の特定の問題や設定 | 個別のモジュールや機能 | システム全体を対象 | システム全体に新機能を追加するが、必要な機能のみを選択的に適用可能 |
適用の頻度 | 必要に応じて個別に適用 | 問題が発生した際や必要に応じて適用 | 定期的にリリースされ、システムの計画的な更新に使用 | 業務要件やプロセス変更のタイミングに応じて適用 |
適用の手順 | 対象のノートを検索し、手動で適用(場合によっては自動ツールを使用) | 必要なSPをダウンロードし、適用ツール(SPAMやSUM)を使用して実行 | SPSの対応バージョンを確認し、ツールでシステム全体を更新 | SUMを使用して適用し、その後スイッチフレームワークで必要な機能を有効化 |
利点 | ピンポイントでの修正や改善が可能 | 特定モジュールのバグ修正やパフォーマンス向上 | システム全体のバージョン統一と安定性確保 | 新機能の追加により、業務プロセスの効率化やビジネス要件への迅速な対応が可能 |
注意点 | 適用後の影響や互換性の確認が必要 | 適用範囲が特定モジュールに限られるため、システム全体の一貫性には依存しない | 適用には計画的なテストとリソース管理が必要 | 適用には対応するSPSが必要であり、適用後の影響を十分にテストすることが重要 |